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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)882号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

本件(一)ないし(五)の敷地の概要は別紙図面のとおりである。

【判旨】

一本件(一)ないし(五)の各土地及び他一筆の土地がもと訴外斉藤所有の一筆の土地であつたところ、これを訴外斉藤が六筆の土地に分筆し、本件(三)の土地を控訴人に、本件(四)及び(五)の各土地を被控訴人三千雄に、それぞれ分譲し、その結果、本件(四)及び(五)の各土地が公道に通じない袋地となり、右各土地の所有者である被控訴人三千雄が囲繞地の通行権を有することとなつたことについては、当事者間に争いがない。

二<証拠>によれば、本件(四)及び(五)の各土地は、当初被控訴人両名で買い受けようとしたものであるが、当時被控訴人昭治に資力がなかつたため、昭和四五年三月に被控訴人三千雄がこれを単独で訴外斉藤から買い受けたものであるところ、その後被控訴人昭治が昭和四六年ころから同四八年ころにかけて被控訴人三千雄に代金を分割して支払い、本件(四)の土地を同人から譲り受けるに至つたことが認められ、右認定に反する証拠はない。そうすると、本件(四)の土地の所有者となつた被控訴人昭治も、民法二一三条二項により囲繞地の通行権を取得するに至つたものというべきである。

三そこで、被控訴人両名の囲繞地通行権が当初どの範囲の土地について成立していたといえるかについて考えるに、<証拠>によれば、訴外斉藤は本件各土地を前記のように分譲するに先立つて、本件(一)及び(二)の各土地を他から分筆して、四メートル巾の道路用地として確保し、昭和四四年一二月には農業委員会から、農地となつていた右各土地を道路に転用することの許可を受け、更に同四五年二月にはその登記簿上の地目をも公衆用道路と変更し、本件各土地を被控訴人三千雄や控訴人に分譲する際にも、右(一)及び(二)の各土地を道路として使用できる旨の説明をし、その後同四六年五月ころ被控訴人三千雄が本件(五)の土地上に、同じころ被控訴人昭治が本件(四)の土地上に、それぞれ建物を建ててそこに居住するようになつてからは、被控訴人らは右(一)及び(二)の各土地を公道に出るための通路として使用しており、更にその後昭和四九年三月ころ控訴人が本件(三)の土地上に建物を建ててそこに居住するようになつてからは、控訴人の方でも右(一)及び(二)の各土地を公道に出るための通路として使用していたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。右認定の事実からすれば、被控訴人両名の囲繞地通行権は、当初は本件(一)及び(二)の各土地の上に成立していたものというべきである。

四その後、控訴人が本件(一)の土地を被控訴人らが本件(二)の土地を、いずれも訴外斉藤から譲り受けたことについては、当事者間に争いがない。右事実によれば、被控訴人昭治所有の本件(四)の土地は幅員二メートルの本件(二)の土地によつて、また被控訴人三千雄所有の本件(五)の土地は右(四)及び(二)の各土地によつて、それぞれ公道に通ずるに至つたことが認められる。

しかしながら、公路に通ずる通路が存在する場合であつても、その通路の形状、幅員等からしてそれが社会通念上その土地の利用にとつて不十分なものである場合には、なお民法二一〇条以下の規定による囲繞地通行権が発生するものと解すべきところ、本件の及び(二)の土地の従前の利用状況等が前記三に認定したとおりであることや、これに加えて、<証拠>によれば、本件(二)の土地のみでは被控訴人らは公道に出るのに三六メートル余の距離を幅員わずか二メートルの通路によつて通行しなければならないこととなり自動車による通行等に種々の支障を生ずることが認められること、また<証拠>によれば、控訴人自身その所有する本件(三)の土地から公道に出るのに本件(一)の幅員二メートルの土地のみを通路とするのでは、自動車の通行等に支障があるものと考え、昭和五二年六月に被控訴人らを相手に被控訴人ら所有の本件(二)の土地を通路として使用させることを求める等の調停の申立てをした事実があることが認められることなどを併せ考えると、本件(四)及び(五)の各土地から公道に通ずる通路としては、本件(二)の土地のみでは、なお不十分なものといわざるを得ず、したがつて、被控訴人らは、現在においてもなお控訴人所有の本件(一)の土地上に囲繞地通行権を有しているものというべきであり、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

五これに対し、控訴人は、本件(一)の土地上に被控訴人らのための通行権が認められることになると、控訴人所有の本件(三)の土地は建築基準法上の接道義務の要件を充たさないこととなり、その上に建築物を建築することが違法とされることとなるから、このような大きな損害を控訴人に与えるような形での被控訴人らの通行権は否定されるべきである旨主張する。たしかに、<証拠>によれば、被控訴人らが本件(四)あるいは(五)の土地の上に建物を建築するに当つて本件(一)の土地をその敷地(路地状敷地部分)として建築確認を取得してしまつたため、その後控訴人が本件(三)の土地上に建物を建築しようとしたときには、本件(一)の土地をその敷地(路地状敷地部分)として使用することができず、そのままでは本件(三)の土地が建築基準法上の接道義務の要件を充たさない土地になつていたことが認められる。しかしながら、その後控訴人は前記認定のとおり本件(一)の土地を訴外斉藤から譲り受けてその所有権を取得したのであるから、これによつて控訴人所有の本件(三)の土地は建築基準法上の接道義務の要件を備えるに至つたものというべきところ、本件(一)の土地の上に被控訴人らのために民法上の通行権が認められたからといつて、これによつて建築基準法上本件(一)の土地を建物の敷地として利用することができなくなるとの法的効果が発生するものとは解し得ないから、右の通行権の発生によつて控訴人所有の本件(三)の土地が建築基準法上適法に建築物を建築することのできない土地になつてしまうとの控訴人の右主張は失当なものといわざるを得ない。もつとも、被控訴人らが本件(一)の土地を所有者から借り受けるなどして、これを自らの建物の敷地としてすでに使用している場合には、建築基準法上の一敷地一建物の原則からして、これを更に重複して控訴人の建物の敷地としても使用することができなくなることはいうまでもないところであるが、被控訴人らが現時点において、控訴人所有の本件(一)の土地を何らかの権原に基づいて、被控訴人らの所有建物の敷地として使用していることをうかがわせるような証拠はない。

その他本件(一)の土地上に被控訴人らのための通行権が認められることによつて控訴人が建築基準法上特段の不利益を被ることになるとの事実を認めるに足りる証拠はない。

(中島恒 塩谷雄 涌井紀夫)

物件目録<省略>

柵の状況図<省略>

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